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語り場

ネタバレなものや140字で語りきれないものを不定期に吐き出す場所です。 出来た小説について語ったりもする。
2024
11,23

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2010
07,07

テストが終わったと思ったらそういえば今日は七夕なのですね。
七夕=雨ということで出掛けに傘を持っていこうと思った私の行動は外れることもなく、やっぱり私の住んでいる地域では今年も雨でした。
どうして決まりきったようにこの時期だけは雨が降るんでしょう。先週はからっからに晴れていたというのに。
元々旧暦の七夕は晴れやすい日にあったのだから、この行事だけは太陽暦になったときに今の時期にずらさなければ良かったのにと思います。やっぱり星を見る行事は晴れ空の下がいいですよね。

さて、こういたって普通っぽい前ふりをしたということはですね、つまりまたSSがあるわけですよ(笑)
季節モノの行事って非常にのりたくなるんですよね。あと、テスト前テンションでがーっと。
ちょっと時間おいて読み返してみたらなんでこんなもん書いてるんだ自分……という気持ちにはなりましたが、まあいいんだ。どんなに恥ずかしいことしてようとそれが親友コンビなら!

と、いうわけで坊とテッドです。いちゃついてる親友が大好きです。
多少坊があちゃーなことしてても気にしないでください。こいつ(書き手)……こんなこといつも考えてんのかよ、と生暖かい目で見ていただけると幸いです。

拍手ありがとうございます! 日々の活力です。

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庭から竹の葉がざわめく音が聞こえる。その心地よい音にぼんやりとしながら筆を指先で弄んでいると、差し向かいで短冊に何か書き込んでいたソウハが顔を上げて期待に満ちた目を向けてきた。
「テッド、書けた?」
「いーや」
「まだ思いつかないんだ」
「だから俺はこういうの苦手だって言っただろ」
 神頼みの類は信頼していない。祈りはただの気休めにすぎないことを長い人生で知りすぎている。
 けれど何故今白紙の短冊と向き合っているのか。それはお世話になっている家のお坊っゃんへのつきあいだ。
 星に願いを。テオ将軍が知り合いから笹をもらったから、その土地の昔からの慣習に則ってお祝いをしてみるのだという。
 正直乗り気ではなかったが、こういうのは乗ってやらないとすぐむくれるから。
お守りもなかなか大変だ。
「さっきからしつこく聞いてくるけど、おまえは書けたのかよ」
「うん、ばっちりだよ」
「じゃあ見せろよ」
「えー。テッドが書き終わったら見せるよ」
「いーだろ、先見たって。ほら貸せよ」
「あ、こら!」
 ソウハの手元から短冊をひったくると、むっとした彼に奪われ返さないようにくるりと背を向けた。
”今年も一年何事もなく、家族みんなが健やかに過ごせますように”
 きれいな筆跡でかかれた願いに目を通すと、テッドはニヤリと笑ってソウハに短冊を返した。
「お前らしい願いだな」
「どういう意味だよ」
「そのままの意味だよ」
 素直で、曲がっていない。どこまでも真っ直ぐな。
 だが、ソウハはからかわれたと思ったのか憮然としたままテッドの手から短冊をとった。
「ったく、自分だけ見るなんてずるいよ。こうなったらどうしたってちゃんと書いてもらうからね」
「見ても減るもんじゃないだろ」
「僕の気が済まないんだ」
「許してくれよ、なっ!」
「今回はそれで誤魔化される気はないからね」
 さすがに誤魔化されなくなったか。ソウハの成長は見ていて楽しいものではあるが、こういう点では厄介だ。内心で舌打ちすると、ソウハはそれを見透かしたように仏頂面で腕を組んだ。
「もう、いっつも『一生のお願い』って言ってるのにこういうときはどうしてつまるんだよ」
「そういう性格してるんだから仕方ないだろ」
 冗談のように、その場で消えていくようなたわいもない願いならいくらでも口にできる。だが、願いを形にすることは無理だ。些細な言葉が何に繋がるかわからない。そこまでのリスクを犯す勇気は、ない。
「本当にないの? 適当でいいのに」
「って言われてもな・・・・・・」
 真っ白のままの短冊を眺める。本当は最初から取り合わなければいいのに、ここでグダグダ悩んでいる自分はずいぶんなお人好しだ。
「ほら、早くしないと。グレミオ待ってるよ」
「・・・・・・・・・・・・」
 願い、か。テッドは自嘲を自分の中にそっと潜める。
 本当の願いは、願うと同時に永遠に叶えられなくなると知っている。
 ここは雰囲気に流されて適当にお茶を濁そうか・・・・・・と頭を絞っていると、横から伸びた手に短冊をひったくられた。
「もういいよ。僕が代わりに書く」
 しびれを切らしたのか、ソウハは訳も分からないことを言い出すとさらさらと素早く短冊になにがしか書き込み始めた。テッドが唖然としている間にソウハは書き込みを終えると、堂々とテッドの鼻先につきつける。
「これでどうだ!」
「せめて乾かせ! 墨垂れる垂れる!」
ぐいっと力ずくで平らな状態に戻すと、短冊の上に踊る文字(ちなみに墨は予想通り垂れていた)が目に飛び込んできた。
”テッドの願いがちゃんと叶いますように テッド代理”
「・・・・・・あのなぁ」
「何、文句ある?」
「お前言ってたよな、短冊って空の星に願いを叶えてもらうために書くんだって」
「うん、それがどうしたの」
「願いを叶えてもらうときに、俺の願いが叶うように願うって意味不明だろーが」
「あ・・・・・・」
 馬鹿だこいつ・・・・・・という呟きは辛うじて飲み込んだ。代わりに深々と嘆息するだけにとどめる。
 ソウハはしばらく短冊を見つめながら何か考えていたが、しばらくすると立ち直ったのか無駄に堂々とのたまった。
「これが不満なら代わりのお願いちゃんと考えてよ」
「あー・・・・・・もういいや。うん、これで」
「おざなりだなー」
 まだちょっと不満げなソウハにテッドは苦笑する。
 こいつはきっと、テッドが困り果てているのに途中で気づいてフォローのためにあんなことを書いたのだろう。内容がひたすらに残念だが。
 いつの間にか気持ちが少しだけ楽になっていた。ソウハを見ていると、自分の運命について深く考えるのが馬鹿馬鹿しくなってくる。
 本当に、馬鹿みたいだと思うけれど、こういう馬鹿は嫌いじゃない。
 テッドは乾きかけの短冊を手にソウハをせきたてた。
「ほら、とっとと行こうぜ。これで済んだんだから」
「うん。今日の夜、晴れるといいんだけど」
「ちょうどいい、晴れたら一緒に星でも見に行くか」
「行く! じゃあ、ますます今夜は晴れてもらわないとね」
 笑いながら、ソウハは竹が立ててある庭へと走っていく。その背中を追いながら、テッドはそっと胸の奥で語りかける。

本当の一番の願いは、きっと叶わない。だからせめて。
お前が叶うよう願ってくれたその願いはお前に捧げよう。
どうか――

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暮兎とは同一人物です。
RPG・読書・海・鉱物・マグリット・児童文学などが好き。
幻水は親友とオベル一家を特にプッシュしてるが実質世界ごと好き。マイナーキャラが取り上げられていると喜ぶ。
APHにも最近どっぷりとはまった。北伊領。主に初恋からの芋とかが絡んでくる流れが好き。 
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